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獣医師のみなさま

症例67

尿の濃縮能を保持したまま糸球体濾過量が急速に低下した猫の1例

症例提示:徳力剛、竹村直行(日本獣医生命科学大学)

1. はじめに

多飲多尿、食欲不振、嘔吐などの典型的な臨床所見がみられる場合、鑑別診断として慢性腎臓病をあげるのは比較的容易である。これに対して、臨床所見がみられず軽度の高窒素血症を呈するのみで、尿検査および超音波検査所見に異常がみられない場合、慢性腎臓病が見過ごされる可能性が高いと思われる。
今回、尿比重は低下することなく、イオヘキソールクリアランス検査で慢性腎臓病と診断できた猫に遭遇したので、その概要をご紹介する。

2. 症例のプロフィールと現病歴

症例はロシアンブルー(避妊雌、2歳10ヵ月齢、体重3.9kg)である(写真1)。
約1歳齢時に近医での血液検査にて、軽度の高窒素血症(BUN:29.8mg/dl, Cre:1.8mg/dl)が認められ、これはその後も2歳9ヵ月齢まで持続していた(BUN:26~36mg/dl, Cre:1.8~2.2mg/dl)。慢性腎臓病の臨床症状は認められず、尿比重の低下も認められなかった。近医おいて2歳5ヵ月齢時および2歳9ヵ月齢時にイオヘキソールクリアランス検査が実施され、結果はそれぞれ38および20%であり、糸球体濾過量(GFR)の急速な低下が認められた。
臨床症状は認められないものの、GFRが急速に低下していることから、腎臓の精査および今後の治療方針の策定を目的に日本獣医生命科学大学動物医療センター腎臓科を受診した。

写真1
写真1

3. 初診時問診・身体検査

問診では、元気食欲もあり多飲多尿は認められないとのことであった。身体検査では、脱水や貧血は認められず、両腎臓とも触知は可能で大きさも正常であると判断した。

4. 各種検査所見

(1)血液検査
血液生化学検査は、BUN:23.1mg/dl、Cre:1.4mg/dl、Ca:11.5 mg/dl、P:2.6mg/dl、Na:157mEq/L、K:4.2、Cl:116mg/dlでいずれも正常であった。

(2)尿検査
尿比重は1.048と充分濃縮されており、尿中蛋白・クレアチニン比(UPC)は0.06と正常であった。尿沈渣では脂肪滴がみられるのみで、膀胱炎などの異常を示す所見は認められなかった。

(3)腎臓の超音波検査所見
左右の腎臓共に内部の三層構造は明瞭であったが、腎乳頭部に軽度の石灰化が認められた(写真2および3)。左右の腎臓の大きさは正常であった(左:2.96×1.91cm、右:2.94×1.79cm、写真4および5)。

(4)その他の検査
安静になれず、血圧測定は不可能であった。
イオヘキソールクリアランス検査は1ヵ月前に実施しているため行わなかった。

写真2
写真2

写真3
写真3

写真4
写真4

写真5
写真5

5. 診断および治療

全身性高血圧は否定できなかったが、血液検査、尿検査および腎臓超音波検査の結果はすべて正常であった。よって慢性腎臓病の悪化要因である腎性蛋白尿および尿路感染症は否定できた。約4ヵ月間で糸球体濾過量が38%から20%に半減していることから、本症例は進行の速い腎臓病であると考えられ、CKD(IRISステージ1)と診断した。
急速なGFR低下の原因として糸球体高血圧の存在が考えられたため、腎臓病用療法食およびベナゼプリル(フォルテコール、2.5mg、1tab/cat, bid)を開始した。

6. コメント

 

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